
2021.12.12
コロナ禍で外出を控えていたとき、気持ちの落ち込みや不眠など、<プチうつ>を感じた人が多かったといわれています。じつは、こうした心の状態は、腸の状態と密接に関わっていることかがわかってきました。
今回は、腸と脳が情報交換しあう<腸脳相関>というしくみについて、帝京大学医学部附属病院メンタルヘルス科教授の功刀浩(くぬぎ ひろし)先生に教えてもらいました。
◆腸が「第二の脳」といわれる理由は?
腸は食べ物を消化して栄養を吸収し、便を作って排泄する臓器として知られていますが、じつは腸の働きはそれだけではありません。腸の中ではホルモン物質やビタミンなどが合成されているほか、免役細胞の約7割が腸に集中しています。腸は全身の健康にかかせない、大事な働きをしているのです。
さらに、近年の研究で、腸と脳は独自のネットワークを介してやり取りし、かなり密接に連携していることがわかってきました。これが<腸脳相関>と呼ばれるしくみです。
例えば、緊張やストレスを感じたときにおなかが痛くなったり下痢をしたり、旅行すると便秘したりという経験はありませんか?
これは、脳のキャッチした不安やストレスが腸に伝えられ、腸内細菌のバランスが変わったり、ぜん動運動が起こるなどして、お通じにも影響を与えているから。 また、私たちが感じる空腹感や満腹感も、腸から脳に信号が伝わることで生まれる感覚です。
こうしたことが『腸は第二の脳』と も呼ばれる理由ですが 、功刀先生によれば、脳から腸に届く情報よりも、実は腸から脳に届く情報のほうが断然多いのだそうです。
「そもそも動物の進化の過程で最初にできた臓器は腸だったということを知っていますか? 原始的な生物は、もともと腸だけしか持っていませんでした。腸はそれだけ重要な臓器であり、『腸が効果的に働くために脳ができた』といっても過言ではありません。もしかしたら『腸は第二の脳』どころか、『第一の脳』といえるのかもしれませんね」。
◆腸と脳は連絡を取り合っている
では、腸と脳はどのようにして連絡を取り合い、お互いにやり取りしているのでしょう。
「腸と脳は、迷走神経という神経を通じてやり取りしています。迷走神経は、『栄養成分が腸に届いた』『便秘で便がたまっている』など、腸がキャッチした情報を脳に伝えるとともに、『腸をしっかりと動かせ』といった脳からの指令を腸に送っているのです」
また、私たちの心の状態も迷走神経を介して脳から腸へと伝わり、腸内フローラ(腸内細菌叢)を変化させることもわかってきました。
●例えば、心が安定しているときは…
脳が楽しいと感じて、リラックスした状態になる
↓
腸の消化・吸収がさかんになる
↓
腸内環境がよくなって、善玉菌が増える
↓
快便になり、お通じもスッキリ!
「一方、近年の研究で『悪玉菌のなかには、ストレスホルモンを感知して 増殖するタイプが存在する』ということもわかってきました。腸と脳のやり取りには、迷走神経とともに、ホルモンも影響しているのです」(功刀先生)
◆腸と「幸せホルモン」の深~い関係
腸と脳の関わりで特に注目されているのは、私たちの感情をコントロールするホルモン物質の産生に、腸が深く関わっているということ。
なかでも幸せな気持ちで過ごすために重要なのが、喜びや快感、前向きな気持ちにかかせない<ドーパミン>と、睡眠・覚醒リズムをコントロールし、心を安定させてくれる<セロトニン>というホルモン。
この2つのホルモンは、食物から摂取したたんぱく質が腸内で分解されたアミノ酸を原料にして作られています。そして、これらのホルモンを増やすには、腸内フローラが「善玉菌優位な状態」であることが欠かせないことがわかってきました。脳と腸だけでなく、腸内細菌も連携して、心の健康を司っているのです。
幸せホルモンのドーパミンや、心を安定させるセロトニンを上手に作るためにも、腸内環境を健康に保ちたいですね!
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