持病を抱えつつ週4のパート勤務で生活し、将来の希望なく過ごしていたアラフォー独身の麦巻さとこ。
古い団地への引っ越しをきっかけに、新たな人間関係と薬膳の力で、自分自身にフィットする〈しあわせ〉を見つけていくドラマ10「
しあわせは食べて寝て待て」。
登場する料理がおいしそうで、食材の効能が自然に学べる。
ひきつけられるストーリーはもちろん、ドラマの軸となる〈
薬膳〉の魅力も話題になっています。
団地を舞台にした同作品では、数々の料理が登場します。その撮影現場はどのようなものなのでしょうか?
4月22日(火)22:00~放送の第4話の撮影現場にカメラが潜入! フードスタイリスト・飯島奈美さんチームの奮闘ぶりや、撮影の様子をご紹介します。
フードスタイリスト・飯島奈美さんインタビューはこちら
暮らしの息づかいを感じる、セットはすみずみまで生活感たっぷり
主人公・麦巻さとこ(桜井ユキ)が、団地で暮らす美山鈴(加賀まりこ)と羽白司(宮沢氷魚)との出会いを通じて、薬膳をゆるやかに取り入れる暮らしを楽しむ本作。
舞台が団地ということで「団地のセットが屋外にあるのかな?」と思っていたオレンジページ一同。たどり着いたのは大きな建物で、撮影現場はその中にあるとのこと。意外な現場の様子に、わくわくしながらスタジオへ向かいます。
あ、このにおい、なんだっけ?
撮影スタジオに入ったとたん、どこかで体感したことがあるような、独特のにおいが。そうだ、ホームセンターの木材コーナーと同じにおいだ、と気がつきます。
それもそのはず、まわりはセットを組み立てている木製のパネルだらけ。天井の高い大きな空間に、所狭しとセットが並んでいます。
登場人物たちが住む団地の部屋のセットは、裏側から見ると木製のパネルで作られています。部屋に向かう団地の階段もスタジオ内に再現。実際の団地でのロケと、スタジオでの撮影を巧みに組み合わせています。
セット越しに実際に人が暮らす部屋をのぞき見しているかのよう。スタジオ内とは思えない、自然な光のさし方にびっくり。
撮影現場の料理の様子は、セット外のモニターでも確認できるシステム。
撮影の開始前に、鈴さんと司が住む部屋のセットに入らせてもらえることに。木製のパネルの階段を上って一歩中へ入れば、そこはまさに団地の一室! 本当にだれかが暮らしているとしか思えない、生活感漂うダイニングキッチンです。
鈴さんと司のダイニングキッチン。窓からのぞく部分には、団地の風景を印刷した幕が張られ、本物の景色のよう。
冷蔵庫の扉にはスーパーのチラシと買い物メモが。
なんと再生栽培中の大根の葉っぱも! ベランダにはミニトマトの鉢もあり、鈴さんがベランダ菜園に励んでいる様子が伝わってきます。
裁縫を得意とする鈴さんらしいお部屋の様子。色とりどりの布がきれい。
続いてさとこのお部屋も拝見! 団地らしく部屋数や広さが同じにもかかわらず、住む人によって雰囲気がまったく異なるのがおもしろいところ。
さとこのダイニングキッチンは、鈴さんの部屋と比べ、ぐっと若い雰囲気。
さとこの冷蔵庫の扉はこんな感じ。どうやらプレゼントキャンペーンのシールをコツコツ集めているよう。
キッチンの窓辺の活用法もすてき。4話ではこのほのかな光がさすキッチンで、「黒豆チリコンカン」を作りました。
さとこのこだわりが感じられるキュートな小物たち。
アラフォー独身女性のモダンなセンスが感じられるインテリア。
いよいよ本番。天ぷらの香りの中で撮影スタート
木製のパネルのにおいに慣れた鼻に、天ぷら油の香りがやってきました。撮影時間が近づき、最初のシーンで使う天ぷらの準備が始まったよう。私たちもじゃまにならない場所で待機します。
飯島さんのチーム「7days kitchen」が作った料理は、スタジオの一画にあるブースから撮影現場まですばやく移動。鈴さんの住む部屋で、撮影用の盛りつけをする7days kitchenのスタッフたち。
さとこと高麗さんが鈴さんから天ぷらをおすそわけされたシーンより。おいしそうな天ぷらにグッとカメラが寄ります。
天ぷらは本番に合わせて、飯島さんが揚げたてを用意。
綿密に打ち合わせをする、7days kitchenのスタッフの一人・板井うみさん。
次のシーンは、鈴さんと司が食卓を囲んで天ぷらを食べるシーン。
「天ぷら、寄りが最初?」
「どのくらいで劣化しちゃうか、確認して」
「早めに撮ったほうがいい。まず揚げたて撮ってからいこう」
「よし」
セットの外で待機している私たちに、撮影陣の声が聞こえてきます。
食事シーンのサポートのため、飯島さんも撮影現場である鈴さんの部屋へ。
本番直前、セットの中で細かな段取りを打ち合わせるスタッフのみなさん。
司役の宮沢氷魚さんと鈴さん役の加賀まりこさんの食卓シーンに向け、板井さんが手際よく天ぷらをセッティング。興味深そうにのぞき込む宮沢さん。
「用意。本番!」
続いて、本番のベルがスタジオ全体に鳴り響きました。
本番撮影中はカメラに映らない場所でスタンバイ。カットがかかるとすかさず手直しを繰り返します。
出番を待つ天ぷらたち。カリッと揚がっていておいしそうです。
緊張の時間が経過し、約15分。
「はい、カット! OK」
天ぷらを食べるシーンを終えた宮沢氷魚さんが楽屋へ戻ってきました。今日の出番はこれで終わりだそう。ちょっぴりお話をうかがってみると……。
「天ぷら、すごくおいしかったです! 本番のあとに全種類いただいちゃいました。とくに鶏の天ぷらは、みずみずしくてしっとりした食感でした。野菜は、れんこん以外は塩もつけずにいただいたんですが、素材の味だけで充分おいしくて」
子どものころからの好物というさつまいもの天ぷらは、「祖父の揚げてくれた味を思い出し、懐かしかった」そう。
「どれもおいしかった!」と笑顔の宮沢さん。
次々と変わるスタジオの香り。ラストは黒豆チリコンカンでスパイシーに
今日の撮影の最後は、さとこが「黒豆チリコンカン」を煮るシーン。いつしか天ぷら油の香りが消え、スパイスの香りが漂ってきました。
クツクツ、クツクツ……。
静かなスタジオに、チリコンカンの煮える音が時を刻みます。
撮影用のチリコンカンは、カメラ映りにベストな煮えぐあいを確認しつつ、同じ鍋を2つ用意。差し替えながら使用します。
さとこの部屋で撮影に立ち会う飯島さん。
撮影の合間にはラップを。細やかな気配りのなか、撮影が行われていきます。
調理シーンでは鍋を混ぜる手つきの指導も。
「黒豆はだるさを取ってくれるから」。そうつぶやきながら、さとこが鍋に入れるシーン用の黒豆。びんに入れてあるのもおしゃれ。
チリコンカン調理シーンの撮影現場。限られたスペース内でスタッフがそれぞれの仕事をこなし、見事な連携プレーを発揮。
本番終了後、キャストやスタッフが去ったスタジオは、ひっそりと静か。調理スペースをのぞくと、黙々と作業をしている飯島さんの姿が。明日の撮影の下準備でしょうか、ていねいに肉に包丁を入れ、バットに並べていきます。
バットを冷蔵庫に入れ、きれいに整頓された調理台を後に立ち去った飯島さん。丸1日立ち仕事をこなし、その技と心くばりで真摯にドラマ制作を支える姿勢に心打たれた一日でした。
さらに今回、特別に「黒豆チリコンカン」のレシピも教えていただきました!
「黒豆チリコンカン」のレシピ
材料(作りやすい分量)
黒豆(乾燥)……100ɡ
豚こま切れ肉……200ɡ
玉ねぎ……1個(約160ɡ)
にんじん……1本(約200ɡ)
トマト……2個(350~400ɡ)
にんにくのみじん切り……1かけ分
ローリエ……1枚
トマトペースト……大さじ1
クミン……小さじ1
カイエンペッパー……小さじ1
オリーブオイル……大さじ1と1/2~2
塩……小さじ1
作り方
(1)黒豆の下ゆでをする黒豆は洗ってざるに上げる。鍋にたっぷりの水と黒豆を入れ、3~4時間おく。豆がふくらんだら中火にかける。沸騰したら泡をすくい、ふたを少しずらしてのせ、弱火にする。指でつまんだらつぶれるくらいの柔らかさになるまで、30分~1時間ゆでる(新豆の場合は早めにゆで上がります)。
(2)材料の下ごしらえをする玉ねぎは1~1.5cm角、にんじんは皮をむいて1~1.5cm角に切る。トマトはへたを取って1.5~2cm角に切る。豚肉は幅1cmに切る。
(3)炒める鍋にオリーブオイル、にんにくを入れて中火で熱し、玉ねぎ、豚肉、にんじんを順に加えて炒める。
(4)煮る豚肉の色が変わってきたら、黒豆、トマト、ローリエ、トマトペースト、クミン、カイエンペッパー、水1/2カップ、塩小さじ1/2を加えて混ぜる。15~20分煮たら、味をみて残りの塩を加える。
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ドラマ後半を前に新たな人物も登場し、さらに盛り上がってきた「しあわせは食べて寝て待て」。「黒豆チリコンカン」のほかにも、ドラマに登場した料理をまねして作ってみるのも楽しいですね。最終話まで、物語も料理もお見逃しなく!
5月2日発売『オレンジページ』5/17号の連載「気になるあの人」では、羽白司役を演じた宮沢氷魚さんのインタビューを掲載。役のこと、お料理のことなど、いろいろとうかがいました。こちらもお楽しみに。
NHKドラマ10「しあわせは食べて寝て待て」
■放送日時
毎週火曜22時~22時45分
4月1日~全9話放送
※毎週金曜(木曜深夜)0時35分~1時20分に再放送あり。
■配信
各話放送終了後から7日間、動画配信サービス「NHKプラス」にて配信
▶NHKプラスHP: https://plus.nhk.jp/