
2022.01.16
私たちの心の状態は、脳内から分泌されるホルモン物質がコントロールしています。これらのホルモンを作るには、腸内環境が整っていることが重要なんです!
喜びや快楽をもたらす「ドーパミン」、心を安定させてくれる「セロトニン」について、帝京大学医学部メンタルヘルス科主任教授の功刀浩(くぬぎ ひろし)先生に教えてもらいました。
◆幸せホルモンが心の状態をコントロールしている
私たちの心の状態には、脳内に存在するホルモン物質が影響しています。幸せな気分には、「ドーパミン」と「セロトニン」という2つのホルモンが関わっていることがわかってきました。
「メディアの影響もあって、最近では『幸せホルモンはセロトニン』というイメージが広がっています。セロトニンは睡眠・覚醒リズムをつかさどり、体のリズムを整えてくれるホルモン。心を安定させ、リラックスさせる働きがあります。でも、セロトニンだけが単独で増えても幸せにはなれません。実は、幸せ気分をもたらしてくれるのはドーパミンのほうなのです」と功刀先生。
そもそもドーパミンはどのような働きをするのでしょうか。
ドーパミンは、人間の意欲や前向きな気持ちに深く関わっているホルモン。楽しいことやうれしいことがあったときに分泌され、快感を得ることができます。人は、快感を得ると「この快感をこれからも何度も味わいたい」と感じ、快感を得た過程を記憶・学習し、意欲的に行動するようになるのです。
「ドーパミンで得られるときめく気持ちや達成感は、いわば<ごほうび>のようなもの。<ごほうび>を得るために、人は意欲を持ち、行動的になる。ドーパミンは、人生の喜びを得るために必要不可欠な脳内物質といえるのです」
そして、ドーパミンが暴走することがないように、セロトニンがバランスをとる働きをしてくれています。つまり、ドーパミンとセロトニンの2つのホルモンが、脳内でバランスよく分泌されることによって、私たちは幸せ気分を感じることができるのです。
◎2つの幸せホルモンの働き
ドーパミン
・快感や喜び、意欲をもたらす働きがある
・ストレスを乗り越えたときに達成感を与えてくれる
セロトニン
・夜間の睡眠、日中の覚醒をコントロールして体のリズムを作る
・心を安定させ、リラックスさせる働きがある
◆幸せホルモンと腸内環境の関係は?
脳内のドーパミンとセロトニンは、たんぱく質(必須アミノ酸)を原料にして作られます。食物から摂取したたんぱく質は腸内でアミノ酸に分解され、その後、血流に乗って脳内へと運ばれ、脳の中でこの2つの幸せホルモンが作られます。
しかし、無菌マウスといって、生まれたときから腸内細菌のいない環境で育ったマウスは、脳内のドーパミンやセロトニンの量が少ないことが知られています。その無菌マウスに通常の腸内細菌を移植すると幸せホルモンが正常化したという研究があります。
この研究からわかるように、「脳内の<ドーパミン>と<セロトニン>を増やすには、健全な腸内細菌をもっていることが第一段階です。また、2つの幸せホルモンが不足することがないように、原料となるたんぱく質(大豆食品、乳製品、卵、肉類など)をしっかりと摂ることも大切です」
◆善玉菌が優位なほうが、幸せホルモンが作られやすい!
幸せホルモンを作るためにもう一つ重要なのが、腸内環境を善玉菌優位に保つこと。じつは、「うつ病の人は腸内環境が乱れがちで、ドーパミンやセロトニンが少ない」という報告もあり、幸せホルモンが脳でよく放出されるようになるには、善玉菌優位な腸内環境が大切だと考えられているのです。
「ちなみに、ビフィズス菌などの善玉菌には、健康によい<短鎖脂肪酸>と呼ばれる酸を産生して、悪玉菌をやっつける働きがあります。善玉菌が増えると<短鎖脂肪酸>の産生量が増えて、腸内環境を良好な状態にキープしやすくなるのです。幸せホルモンが作られやすくなるように、善玉菌の多い腸内環境を保つようにしてくださいね」(功刀先生)
◎幸せホルモンが腸から脳に届くのは…
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