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ひまわり畑が循環し、ワクワクする多くの可能性を生み出す〈遠藤ファーム〉遠藤政子さん【生産者インタビュー・埼玉・群馬】

2024.09.30

果てしなく広がる満開のひまわり畑。この花たちのおかげで、ミツバチが元気に蜜を集め、農作物がおいしく育ってくれる。完全循環型農法を実践し、地域に貢献しようと奮闘する〈遠藤ファーム〉の遠藤政子さんに話を伺いました。

白ねぎややまといもを有機栽培で育てる農家

夏の終わりのまだまだ暑い日、スカッと晴れた青空の下、見渡す限り一面に広がるのはひまわりが咲き乱れる畑。すぐ近くを利根川が流れ、群馬県太田市と埼玉県熊谷市の県境をまたぐように、遠藤ファームの畑があります。
日本最高気温をたたき出したこともあるほど猛暑で有名な熊谷市ですが、空が広く高く、さわやかに風の通る広大な畑でひまわりたちに囲まれていると、暑さも忘れるほどウキウキと楽しい気分に心が満たされ、不思議と体に元気がみなぎってくるような気がします。「花のパワーってすごいですよね」と明るい笑顔で案内してくれたのは、〈遠藤ファーム〉代表の遠藤政子さん。
 
「飛び地だったりして離れたところもありますが、全部で東京ドーム2個半くらいの敷地があります。でもほとんどは借りている土地です。この地域は高齢化、過疎化が進み、辞めてしまう農家さんも多いので、使わなくなった農地を私たちで借りて、管理しながら農作物を育てています」

〈遠藤ファーム〉では、化学肥料を使わず有機質肥料で白ねぎ、やまといも、ごぼうなどを中心に、にんじん、里いもなどの主に根菜類を約50品目栽培しています。
利根川流域の肥沃な土壌はやまといもの栽培に適しており、日本有数の生産地として知られています。しっかりと粘りがあり、甘みの深いやまといもは、地域のブランド野菜として親しまれています。また埼玉県でねぎといえば特に深谷ねぎが有名ですが、この地域も高品質なねぎ栽培に力を入れているそうです。〈遠藤ファーム〉では一年じゅう出荷ができるよう時期と品種を変えてねぎを栽培しており、品種栽培日本一を誇ります。

さて、野菜を育てているのに、どうしてひまわり畑なの? と思うかもしれませんが、じつはとても重要な役割を果たしているのです。


花は畑の栄養になり、ミツバチの蜜源に。循環型農業を実践 

「このひまわりは、野菜のために栽培しています。おいしい野菜を元気に育てるために重要なのは土壌。野菜を収穫した後の畑には、土壌を休ませるために花の種をまき、花が咲いた後は、緑肥として畑にすき込みます。そうすることで化学肥料に頼らずとも、自然の力で豊かな土壌を作ることができます」と遠藤さん。

ひまわりは、土の中深くまで根を張る性質があるため、空気と水の循環を促し、保水性や浸水性の向上など、土壌の改善によい効果があるといわれています。
また根から分泌される物質により、農作物に有効な土の中の微生物を活性化させます。生長のスピードも早く、他の雑草が生えることを防ぐ効果もあります。花が枯れた後は土に返すことで有機物として土壌に栄養を供給します。

〈遠藤ファーム〉では、春は菜の花、初夏はクローバー、夏から秋はひまわりなど、季節によってその時期に適した花の種をまいて育てています。
場所によって少しずつ時期をずらし、農作物の収穫から花の種まき、開花を効率よく計画的に行えるようにしています。ひまわりは夏の花のイメージが強いですが、うまく栽培すれば12月初旬ごろまで咲かせることができるそうです。

「そうはいっても花の緑肥は手間もお金もかかるので、なかなか採算は合いません。私たちは、花畑を有効に活用するために養蜂を行い、はちみつを採取しています。自分たちで花を育てているので蜜源は豊富。ミツバチがストレスフリーで元気に活動できる環境を整えています。量はまだ少ないですが、菜の花からはビーポーレン(ミツバチ花粉。スーパーフードといわれている)も採取しています。ひまわりからは種をとり、ひまわりオイルも抽出しています」

ミツバチは花粉を運んで植物の受粉を媒介し、環境にも生態系にも重要な昆虫です。〈遠藤ファーム〉のはちみつを味見させてもらうと、体にすっとしみ込むような、自然のやさしい甘さ。ひまわり、菜の花、クローバー、百花蜜など、その時期の花の種類で味も変わります。
養蜂業では花のない時期はミツバチにえさとして砂糖水を与えることもあるそうですが、〈遠藤ファーム〉では砂糖水はいっさい与えず、自分たちの育てた花でミツバチたちが元気に活動している、自然の純粋なはちみつです。

ひまわり畑とともに困難を乗り越えて

遠藤さんは栃木県の出身で、以前は農業にまったく興味はなく、特にかかわりのない暮らしをしていました。アパレル会社に勤め、雑貨やインテリアに関する仕事をしていたそうです。
結婚をきっかけにこの地へ移住。やがて夫が実家の家業を継ぎ、何もわからないところから農業にかかわることになりました。夫は「変態」と言われるほどの職人肌だそうで、農作物のよりよい栽培方法を常に探求し、環境や健康を考えた、地球にやさしい農業を実践しています。

遠藤さんも最初のころは無理をして農作業を頑張っていたそうですが、妊娠、出産も重なり、いつしか体調をくずしてしまいました。それからは自分らしい得意分野を生かそうと考え、主に自社商品のブランディングや広報、企画、営業などを中心に活動しています。

はちみつはびんやラベルのデザインを少しずつリニューアルし、ドリンクやシャンプーなど新しい商品の開発も行いました。地元に直営のショップをつくり、イベント出店や直売所での販売、ネットショップの構築も行っています。イベントに出たことがきっかけで、化粧品メーカーとつながりができ、伊勢丹新宿店にてダブルネームで販売するなど、幅広く発展していきました。


しかし農業に従事してからは困難も多く、2019年には豪雨による水害で、自宅や車、農機具などがすべて水没してしまったそうです。昔の養蚕の納屋を改装したばかりのショップも浸水してしまいました。店内のカウンターなどの什器には水が入ってしまった跡が今も残っています。
その後はコロナ禍に突入し、人の移動がままならなくなってしまいました。まったく先の見えない暗くつらい日々の中で、あるとき、幼稚園の子どもたちが遠足にも行けず、ストレスをためていることを知り、そこで思いついたのがひまわり畑の開放でした。

 たくさんの“ワクワク”がつながって、世界と異文化交流も

「ここなら密にはならないし、子どもたちがひまわりを見て、少しでも明るい気持ちになってくれたらうれしいと思って」と遠藤さん。
学校や幼稚園、老人ホームなどに無料開放しました。元気になった子どもたちやお年寄りに喜ばれ、少しずつ世の中に知られるようになっていきました。やがてテレビなどで取り上げられるようになると、遠方から見学に来る人も増えていきました。

現在は駐車場を完備し、案内パンフレットを作って紹介しています。地元の大学生たちといっしょに秋はイルミネーションのイベントも行っています。

「この地域は暑いので、じつはかき氷が有名なんですよね。パンフレットではいっしょに地元の飲食店を紹介し、ひまわり畑を見ながら、この街を楽しんでもらい、少しでも地域のお役に立てたらと思っています。まだまだ模索しながらですが、さまざまなジャンルの人とつながって、何か共創できたらと考えています」

そして、ひまわり畑を見てもらうことで、農業や自然環境について少しでも考えてもらえるきっかけになれば、と遠藤さんは願っています。

ひまわり畑の美しさが注目され、本格的な撮影依頼も来るようになりました。
ウェディングや企業のPV撮影、映画撮影などにも使われるように。プロのカメラマンやインスタグラマー、コスプレイヤーの撮影も行われています(プロの撮影、商業撮影等の場合は事前に要連絡)。芸術的な撮影を行うコスプレイヤーがSNSで拡散したことにより、国内外の来園も増えたそうです。

「日本のアニメから派生したコスプレですが、今はアートのように非常にクオリティの高い撮影をされるかたも多く、私もまったく知らなかった世界で、たいへん学びがありました。ひまわり畑はあくまで農作物の栽培やミツバチのために行っていることであり、おいしい農作物、おいしいはちみつを作ることがいちばんの大前提。それは充分にご理解いただいたうえで、ひまわりをきっかけに新しい世界に出会えることはとてもありがたいです。ワクワクすることをもっと多くの人々と共有して、いっしょに作り上げていきたい。最近は台湾との異文化交流にも力を入れています」

〈遠藤ファーム〉の合言葉は「わくわくサイクルを」。たくさんの苦労を経験しながらも、常に明るい笑顔で元気に多方面に活動する、遠藤さん自身がまるで大きなひまわりのような人でした。〈遠藤ファーム〉のひまわり畑や農作物、はちみつのオリジナル商品、ぜひチェックしてみてください。

 
遠藤ファーム
https://www.endo-farm.com/

文/江澤香織

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