2023.12.04
「あのとんかつを食べると懐かしさと元気をもらえるよ!」
ある日、私と田辺さんは仕事の合間に中華料理屋でごはんを食べていました。二人で注文した料理を待っていると、田辺さんが言いました。
田辺さん「オレンジページの連載は大丈夫?」
田辺さんは都会で暮らす子を思う実家の親のように、この連載を常に気にかけてくれます。
私「いつも心配かけてごめんね」
田辺さん「良いのよ。私が勝手に心配しているだけだから」
彼女が何故こんなに心配しているのかというと、以前、田辺さん自身が食べ物についての文章を書いたとき、「とても美味しかった! マジヤバい」と、気持ちのままに書いたら二行で終わってしまい、それ以来、「食べ物の文章を書くのはとても大変である」と心に刻み付けたそうです。
田辺さん「食べ物のエッセイはマジむずい。美味しいだけじゃ一言で終わるし、文字で美味しさが伝わる表現とか考えないといけないし、ちょっと欲を言えば少し笑えるエピソードもひとつくらい起こっていて欲しいし」
私「それ私がいつも思っていることだ!」
田辺さん「実はオレンジページにぴったりな店を発見してきたの」
ちょうどそのとき、注文した料理が運ばれてきて、
田辺さん「この話はまた後で! うわ 〜! 湯気がすごいよ! うひょ~!」
田辺さんは目の前の料理に夢中になり、私たちは料理に集中してその場は終わりました。
田辺さん「それで、さっきの話の続きなんだけど」
その日の仕事が終わると、田辺さんはお菓子の袋を開けながら話し始めました。
田辺さん「私ひとりの仕事があった日なんだけどね。仕事と仕事の合間に2時間くらいフリーの時間があって、マネージャーさんとスタイリストさんとごはんを食べようってなったの」
私「うんうん」
田辺さん「新宿だったんだけど、新宿って色んな店があって逆に迷うじゃない? そうしたらマネージャーさんが、『すごくおススメのお店があります』って案内してくれてさ」
少し前にぼる塾はマネージャーさんが変わったのですが、以前の女性マネージャーさんも現在の男性マネージャーさんもとても美味しい物に詳しく、田辺さんが「ぼる塾のマネージャーってグルメな人に受け継がれるのかしら? 」と言っていました。
田辺さん「その店はわかりにくい場所にあったんだけど、すごい行列で混んでてさ! そこがとんちんかん!」
私「どんな風にとんちんかんなの?」
田辺さん「違うよ! 店の名前が【豚珍館(とんちんかん)】なの! とんかつ屋さんだよ!」
田辺さんは美味しい物の為なら列に並ぶのが苦にならないタイプなので、「この行列! どれだけ美味しいんだ! わくわく!」とルンルン気分で並んだそうです。
田辺さん「お店は二階なんだけど、入口付近にメニューがあってさ! メニューも 豊富で見ていて楽しいの! とんかつ定食、チキンカツ定食、生姜焼き定食、他にもいっぱい! 私の大好きなコロッケもあってさ! しかもクリームコロッケなんだよ~!」
※田辺さんはテレビ朝日の【アメトーーク!】という番組で【コロッケ芸人】として出演するほどコロッケを愛しています。
私「じゃあコロッケ定食にしたの?」
田辺さん「でもね…マネージャーさんのおススメが上ロースだったの…。私はものすごく迷った…でも、結局上ロースにしたよ。マネージャーさんの舌と比べたらコロッケ芸人のプライドなんてないよ」
田辺さんはマネージャーさんを信じ、コロッケ芸人のプライドを捨てたそうでした。
田辺さん「人気店だから並ぶんだけど、先に注文取ってくれるからテーブルについたら早いの! 座りました。『はい、どうぞ!』びっくりするはやさ!」
私「コロッケ芸人のプライドを捨てた上ロースはどうだった?」
田辺さん「最高だった! 私、とんかつはヒレ派なんだけど、ロース派に寝返るかも」
田辺さんに上ロースを紹介したマネージャーさんは、彼女にコロッケ芸人のプライドを捨てさせただけでは終わらず、ヒレへの裏切りまでさせたようでした。
田辺さん「とんかつが大きくて分厚くてさ! 衣はサクサクっ! 豚のしっかりした甘みを感じるの! 油の甘みって言葉があるけど、ここのとんかつはまさにそれ! だけどしつこい油っぽさは全くないのよ。それからソースは甘口と辛口両方あって! 後、塩も! どれ使っても美味しくて!」
田辺さんは最後の一切れに甘口と辛口と塩のどれを使うか迷って「ちょっと泣いた」と言っていました。
田辺さん「大きくて分厚いのに食べ終わったときに『もっと食べたかった!』ってなったよ。そう…もっと食べたかったのよ! …それなのになんでよ! Sさんっ!」
※Sさんは田辺さんと【豚珍館】に行ったスタイリストさんです
私「Sさんがどうしたの?」
田辺さん「聞いてよ! 【豚珍館】は豚汁がおかわり無料でメチャクチャ美味しかったの! Sさんも『私、汁物大好きなんです!』って豚汁が大ヒットしていて」
私「うんうん」
田辺さん「私は勿論豚汁をおかわりしたんだけど、Sさんは小食なのにとんかつが残った状態で豚汁をおかわりしたの」
私「ほうほう」
田辺さん「私は(しめしめ…Sさんは絶対に食べきれない)そう思ったわ。だからSさんが残したらとんかつをもらおう。いつとんかつがもらえるんだろう。あら、…おかしいね? …私の出番は無かった。あの小食のSさんが豚汁をおかわりしても完食するとんかつだったの」
私「これって田辺さんが人の食べ残しを狙っていたって話?」
田辺さん「まあね」
田辺さんはそう言って上ロースかつの写真を見せてくれました。
撮影・文/酒寄希望
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